建築用3Dプリンターとは

3D Construction Printing (3DCP) の基礎知識

建築用3Dプリンターとは

建築用3Dプリンター(3DCP: 3D Construction Printing)とは、 コンクリートなどの建築材料を層状に積み重ねて、 建物の壁や構造物を自動で造形する技術です。

従来の建築では、型枠を組んでコンクリートを流し込む工程が必要でしたが、 3Dプリンターを使えば型枠なしで直接壁を「印刷」できます。 デジタルの3Dモデルから直接建物を作り出せるため、 設計の自由度が大幅に向上します。

基本的な仕組み

1. 3Dモデル作成

CAD/BIMソフトで建物を設計

2. G-code生成

プリンターの動作経路を計算

3. 材料供給

専用コンクリートをミキシング

4. 積層造形

ノズルから吐出し層を積み上げ

プリンターの種類

🏗️

ガントリー型

門型のフレームがレール上を移動し、ノズルがXYZ方向に動いて造形します。 大規模な建築物に適しており、安定した精度が特徴です。

代表例: COBOD BOD2, ICON Vulcan
🦾

ロボットアーム型

産業用ロボットアームの先端にノズルを取り付けた方式。 設置の柔軟性が高く、複雑な形状の造形が得意です。

代表例: CyBe Construction, Apis Cor

注目される理由

⏱️

工期の大幅短縮

従来工法では数週間かかる壁の施工が、3Dプリンターなら数日で完了。 24時間稼働も可能で、全体工期を30〜70%短縮できるケースもあります。

事例: ICON社の住宅は壁を24時間以内に完成

💰

コスト削減

型枠が不要になり、人件費も削減。材料の無駄も減らせます。 特に同一設計の複数棟建設では、大きなコストメリットが生まれます。

目標: 従来工法比20〜40%のコスト削減

👷

人手不足への対応

建設業界は深刻な人手不足に直面しています。 3Dプリンターは自動化により、少人数での施工を可能にします。 熟練工の技術をデジタルデータとして再現できます。

効果: 現場作業員を最大80%削減した事例も

🎨

デザインの自由度

曲線や複雑な形状も、追加コストなしで実現可能。 従来は高コストだった有機的なデザインも、 3Dプリンターなら直線と同じコストで造形できます。

特徴: 曲面・複雑形状のコスト増なし

🌱

環境負荷の低減

必要な場所に必要な量だけ材料を配置するため、廃棄物が大幅に減少。 中空構造により材料使用量も削減できます。 リサイクル材料の活用研究も進んでいます。

削減: 建設廃棄物を最大90%削減

🏠

住宅問題への貢献

低コスト・短工期の特性を活かし、 アフォーダブル住宅(手頃な価格の住宅)の供給や、 災害復興住宅の迅速な建設に期待されています。

活用: 途上国の住宅供給、災害復興

現状の課題

建築用3Dプリンターは革新的な技術ですが、普及に向けてはいくつかの課題があります。

📜

法規制・基準の整備

建築基準法は従来工法を前提としており、3Dプリント建築に対応した基準が未整備。 構造計算手法や品質管理基準の確立が必要です。

動向: 国交省が技術基準策定を検討中

🔬

構造性能の実証

積層構造の長期耐久性、耐震性能などのデータ蓄積が必要。 層間の接着強度や異方性の影響など、研究が進行中です。

対応: 大学・研究機関で実証実験進行中

💴

初期投資コスト

プリンター本体は数千万〜数億円。中小企業にとっては大きな投資負担となります。 リース・レンタルモデルの普及が期待されます。

解決策: レンタル・シェアリングモデル

🧱

材料の調達・品質

3Dプリント専用のコンクリートは、押出性・積層性・強度を両立する特殊配合が必要。 国内での安定供給体制が課題です。

進展: 国内メーカーが開発を推進

👨‍🎓

人材の育成

3Dモデリング、G-code生成、プリンター操作、材料管理など、 新しいスキルセットを持つ技術者が不足しています。

対応: 教育カリキュラムを提供

🔧

後工程との連携

3Dプリントで作れるのは主に壁・構造体。屋根、窓、設備工事は従来工法との 組み合わせが必要で、工程調整が課題です。

解決策: BIMによる事前調整

世界の動向

市場規模の推移

建築用3Dプリンター市場は急速に成長しています。 2024年の市場規模は約20億ドル、2030年には100億ドルを超えると予測されています。

年平均成長率 25%+

2024-2030年の予測

主要プレイヤー

  • ICON (米国) - 住宅・軍事施設
  • COBOD (デンマーク) - 世界最大シェア
  • Apis Cor (米国) - ロボットアーム型
  • WASP (イタリア) - 土・粘土素材
  • セレンディクス (日本) - 国内先駆者

各国の取り組み

🇦🇪

ドバイ

2030年に建物の25%を3Dプリント

🇺🇸

アメリカ

100戸規模の住宅地が完成

🇩🇪

ドイツ

建築許可取得の実績多数

🇯🇵

日本

建築確認取得住宅が登場

日本での現状

先行企業の取り組み

  • セレンディクス - Sphere、Fujitsuboを開発
  • 大林組 - 3Dプリント研究開発
  • 清水建設 - 建設ロボット技術
  • 大成建設 - T-3DP技術開発
  • 會澤高圧コンクリート - 材料開発

今後の展望

人手不足が深刻化する日本の建設業界において、 3Dプリンターは生産性向上の切り札として期待されています。 国土交通省も技術基準の整備を進めており、 今後数年で普及が加速すると見られています。

建築3Dプリンターについてもっと知りたい方へ

事例やスキル情報をご覧ください

事例を見る スキルを学ぶ